空の思い出

ある日のことです。

息子が帰ってくるなり、
「空がきれいやなあ、おかあさん」 と言いました。
その日の空はとても美しく、どこまでも澄みわたっていました。

ご近所の方の話によると、息子はランドセルを放り出し、
空き地に寝転んで、ずっと空を眺めていたそうです。
私は急ぎの用があり、手を休めることなく窓の外を眺めただけで、
本当にきれいやねと答え、
空が何故美しいのか説明したのですが、
あとでそのことをとても後悔しました。

それから半月後、息子は交通事故で亡くなり、
二度と一緒に空を眺めることは出来なくなりました。

空を見るとそのときのことを思い出して辛かったのですが、
今は、あのときの息子の気持ちに近づきたくて、よく空を眺めます。
雲が流れていくのを見るのは飽きません。
澄んだ美しい空も、雲が流れていく空も、雨粒が落ちてくる空も、
どれも美しいと感じます。

世界には美しいものがあるなあ・・。
そう思うとき、少し幸せな気分になります。

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