つまらないこと

以前住んでいた家を建て替えたとき
駐車場をつくるために
生垣を数本切った。

何の木だったろう。
多分・・・・さざんか。
工事の人がチェーンソーで
あっという間に切り倒す。
低木でも植えられて20年近く経つ木々は
幹も枝も重なり合って
数本もろとも どさりと倒れる。
残された幹からは
樹液が一斉ににじみ出て
木の 無言の悲鳴のように感じて。

それでも 邪魔になるからと
庭の松の木も ついでに切った。
本当についでだったのだ。
切るまでは迷っていたけれど
ついでに切りますかと言われて
切ってしまうことにしたのだった。

何年もかけ 大きく育った木でも
人間の手であっという間に姿を消す。

庭にぽっかりと空いた穴を見て
ここに越してきて初めての春
松の木の根元に
ぜんまいが生えていたのを思い出した。
そこだけ見ると山の雰囲気。
ビールの匂いにも似ている 森の匂い。
それは確かに
癒される空間でもあったのに。

それでも前の住人の匂いを消すように
たくさんあったつつじやさつきや
鶯がやってくる梅の木も
切ったり抜いたり
人にあげたり。
庭は明るくなったけど
なにか取り返しのつかないことをしたようで
あれから埋め合わせのように
他の木を植えたりして。

春。

近くの家が半分を取り壊し工事中。
いつの間にか消えていた
大きな木。

人はときどき
つまらないことをする。

2008.4.3


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