事故詳細

 当時は 被害者通知制度 もまだ施行されていない頃で、警察でも検察でも詳しいことは教えてもらえず、事故から1年後に始まった刑事裁判でようやく知ることが出来ました。加害者は矛盾したことを言い続けていましたが、目撃者の証言でようやく事故の概要が分かりました。
 その日加害者は、草刈の仕事を終え帰宅途中でした。加害者は心臓病と喘息を患い、薬を常時携帯する体でしたが、日雇いでダンプを運転する仕事をしていました。
 薄暗くなっていた時間帯でしたがライトを点灯せず、反対車線が渋滞している片側1車線の下り坂を時速35kmで走行。反対車線には横断歩道の3台手前に路線バスが停止していたため徐行していた。横断歩道の手前の車の間から犬の頭が見えたが、犬は止まっているようでもあり、犬だから轢いても構わないと、ブレーキをかけずにそのまま進行、衝撃があり何かに乗り上げるように車体が揺れ、犬を轢いたと思った。
 加害者はようやく車を停止させました。運転席から後ろを見ると、犬は白かったのに黒っぽいものが倒れていたことを不審に思い近づいてみて、ようやく人を轢いたことに気が付いたそうです。慌てて近くの店に救急車を頼み、その後は何もせず隠れていたようでしたが、警察には救急車が来るまで被害者の側にいたと嘘をついていました。
 目撃者の話によると息子は横断歩道を渡ろうとしたが、横断歩道を塞いで停止していた車があったため手前で少し立ち止まり、持っていた懐中電灯をチェックしていたそうです。その時に待ちきれなくなったのか犬が先に歩き始め、道路より一段高い歩道から降りるかたちになったため勢いがつき、そのまま道路の中心に向かって移動。リードを手に巻きつけ手を伸ばした状態だったので、息子の体と犬との間は1m程離れていました。

何故事故が起きたのだろう

速度・・・加害者は横断歩道があることも認識していたが、彼の徐行と考えている速度では仮に急に人が出てきても止まることが出来ない。徐行するなら時速10km以下で走らなければならない。

ライト未点灯・・・日没時間は過ぎていた。もし点いていたら犬も息子も車の接近に気が付いたのではないか。

加害者の健康・・・持病があるうえ当時65歳の高齢。疲れていたに違いない。

加害者の人間性・・・動物だから轢いてもよいと思うこと自体がおかしいのではないか。命を軽視しているのではないか。

横断歩道を塞いでいた車・・・直接的原因ではないが間接的な原因を作っている。横断歩道は歩行者の聖域であることを忘れている。これくらいなら大丈夫と言う軽い考えが事故を引き起こす。基本を守って欲しい。

道路状況・・・事故の4,5年前に造られた新しい道路で年々交通量が増えており、それに伴い事故も増えていた。道路設置と同時に安全対策も考えるべきではないか。
 息子が亡くなった横断歩道では過去に何度も子どもが事故に遭っているが、幸いにも皆軽い怪我で済んでいた。以前から信号機道設置の要望があったが、横断歩道付近の道路沿いの一部の住民の反対があり、自治会は何もしなかった。反対の理由は赤信号で停止した車の排気ガスが迷惑だということだったそうだ。事故後すぐに自治会は市に要望書を提出したが、事故が起きてからでは遅過ぎる。

その他・・・事故の起こった道路は坂道となっており、制限速度40kmにも関わらずスピードを出す車が多い。いつもそのような道路を見慣れていた私は、逆に渋滞車が連なって殆ど動かない状況を安全だと勘違いした。
 幼い子どもが犬を怖がって道路に飛び出さないようにと、いつでも犬を止められるようにリードを手に巻きつけて持つよう教えていた。リードを離すことが出来たら事故に遭わなかったかもしれない。
 自分の家族は決して事故に遭わないと理由もなく考え、交通事故に対する意識が低かった。
 交通事故は決して他人事ではない。

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