雨が上がり
太陽が顔を出して気温が上がってきたお昼前、
大阪のある町で、
お世話になったある方の告別式に行く途中、
蝉が鳴いているのに気が付きました。

今年初めてです。
長い間土の中で静かに成長を待ち、
ようやく出てきた世界の僅かな時間のなかで精一杯生き、
次に命を託してまた土に還っていく。

夏は命の躍動を感じます。
蝉の鳴き声、高く繁った草が風にざわざわとなびく様に
命が満ちていると感じます。

今年初めて聴いた蝉の鳴き声に、
旅立ってゆく人の命を重ねて考えました。
命とは一体どういうものなのだろう。
命が満ちているこの世界。
あらゆるところで命が生まれ、同時に死んでいく多くの命。
虫や草や動物は、命とは? なんて考えない。
ただ精一杯生きている。
人間だけが命について考え、大切にし粗末にもする。

命って一体何だろう。
輪廻転生があると言う人もいるし、
死んだら天国で生活をすると言う人もいる。
生きている間には絶対に分からないことではあるけれど、
私は今は命に終わりはないような気がしている。
死んだらどじにも会える、
また次に生まれた時に会えるかもしれない。
そう思うと死ぬのも少し楽しみになります。

だからと言って死は喜びではない。
お世話になった方は突然の死だった。
信じられない思いで一杯です。

彼は、あるイベントの開催に協力いただいた方です。
彼はアルコール依存症でしたが、断酒を決意し、
断酒をしてからはアルコール依存症の人達への支援や
酒を飲んだ上での交通事故や一気飲ませによる死などの
酒害によって被害を受けた人達への支援などをされていました。
私は個人的に親しい訳ではないので詳しくは知りませんが、
他にもいろいろと活動をなさっていたそうです。

飄々として優しい方でした。
あの笑顔が思い出されます。

告別式での奥様の挨拶は、様様な方への感謝の言葉ばかりでした。
何度もお礼の言葉を述べられて、
娘さんたちと深々と頭を下げられるのです。
そして最後に夫への感謝の言葉。

素晴らしいご家族だと思いました。
早過ぎる死ではありましたが、
彼の人生はとても幸福なものであったのではないでしょうか。

心から冥福を祈ります。

2005.7.12

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