以前住んでいた街は
山があって 川があって
商店街があって
工場があって
住宅街があって。

いやなこともあったけど
いやなひともいたけれど
夏のようやく涼しくなる時間から開かれる
商店街での夜市の賑わいが好きで
暗い夜に広がる花火を
大きな音とともに見上げるのが好きで
商店街のはずれから見る
建物の間にぽっかり浮かぶ満月を
なんだか懐かしいような気持ちで見るのが好きで
川の横の桜を眺めながら歩くのが好きで
すずしい水の匂いが好きで
新緑のころの
新しい色のまじった山を眺めるのが好きで
森の匂いを感じながら 山を歩くのも好きで
まだ残っている田んぼ道
小川の横の草の道を
蛇を踏まないように気をつけながら
歩くのもけっこう好きで
たまに旅行に行って
帰ってきた日などは
ああ 帰ってきたなとほっとしたりして
とにかく過去に
いろんなことがあったとしても
やっぱりその街が好きだった。

いまは その街がいやだ。

封印していた過去の記憶が
戻りつつある
いま

こどもたちの 歌声を思い出して
歌を口ずさんだりして
まるでそれは
傷口に塩を
塗りこむよう

2007.3.16



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